『RUN RUN RUN』が文庫になりました。


山下卓からお知らせです。『RUN RUN RUN』が文庫になりました。

山下卓「RUN RUN RUN」(徳間文庫)

「RUN RUN RUN」(徳間文庫)

この小説は2006年に徳間書店からハードカバーで出版されたものの文庫版になります。

思えば、これがライトノベルではない小説を書いた最初の作品になります。

この時期はファミ通文庫で書いていたライトノベル『BLOODLINK』に行き詰まっていた時期でもあり、自分がなにを書けばいいのかを完璧に見失っていた時期でもありました。

そんな時期に、徳間書店の永田さん(編集者)がライトノベル以外でなにか書きませんか、とおっしゃってくれたのでした。

どんな小説がいいんですかね、と尋ねると、突然出会った女の子が旅に出るようなロードムービーっぽい小説はいかがでしょう、とのこと。この一言で、なんだか書けそうだな、という気がして、かなりあっさり安請け合いをしてしまいました。

でも、これが、家に帰ると、書けそうだった気分が一瞬で消えてしまうのですね。

ちょうどその時期、深夜のテレビ番組でたまたま(たしか『新宿24時』という番組)で、キャバクラ嬢のドキュメンタリーをやっていて、24歳のキャバクラ嬢が一人でバッティングセンターでボールを打っている姿がテレビに映っていました。

ああ、この子だったら、明日にでも旅に出てしまいそうだな、とぼんやりと思ったとき、不思議なくらいパアッと物語が頭の中に広がり、あとは勝手に、女子高生が現れ、三十路間近の女性編集者が現れ、三人が新宿で出会って、新潟に旅に出ていきました。

僕自身もどこかに行ってしまいたい気分の時に書いたせいか、三人の女の子と一緒に旅に出ているような気分で、楽しく書けたのを覚えています。

でも、一度は書き上がった原稿の手直しにかなり手間取り、けっきょく約束していた時期は見事に過ぎてしまったのでした。

で、やばいなあ、怒られちゃうなあ、やだなあ……と思って、僕が思いついたアイデアは、僕の原稿が遅れる代わりに、優秀な作家を一人紹介しようということでした。

それが、その当時、ちょうど知り合って、飲み友達になっていた深見真くんでした。

この目論見は見事に成功するのですが、いくつか誤算がありました。

僕の原稿の遅れを見逃してもらうために紹介した深見真くんの『ヤングガンカルナバル』という小説が、とってもとっても売れまくってしまったんですね。

で、ようやく脱稿した僕の『RUN RUN RUN』の影がすっかり薄くなって、微妙に悔しい思いをしたのを覚えています。

深見くんの『ヤングガンカルナバル』はその後も徳間エッジの看板シリーズに成長し、つい先月に最終刊が出て、堂々完結しました。すっかり売れっ子作家になった深見くんは、僕の家の近所からすごく高級そうなマンションに引っ越していき、素敵な奥さんと結婚して、可愛い子供までもうけました。

僕はときどき、そのマンションに遊びに行き、その映画館やらフィットネスクラブやらまでが入った高層マンションを見上げて、ああ、あのとき紹介するんじゃなかったなあ、とか心の狭いことをふと思ったりします。

そんないろいろな思い出がある『RUN RUN RUN』が文庫として再び書店に並んでくれるのは、すごく感慨深いものです。

リニューアルを機に、表紙は、友人の森本晃司氏にお願いしました。実は、ハードカバーのときも森本さんに頼もうとして、原稿まで読んでもらっていたのに、僕の原稿が遅れに遅れてすっかり頼む時間がなくなってしまったというヒドイ経緯もあります。

でも、やっぱり、森本さんの表紙、さすがですね。

小説の中にある澄んだ冬の空気が見事に再現されています。

税込み600円というお手頃な価格です。

ブックオフに流れてくるのを待ったりせず、この機会にぜひ読んでみてください。

ちょうど冬の時期の物語です。旅に出てみたくなりますよ。

ではまた。(山下卓)

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『RUN RUN RUN』が文庫になりました。 への2件のフィードバック

  1. ルナ のコメント:

    はじめまして。
    店長さんとのやりとりを見させていただき、思い切ってメッセージしてみました。
    あのTVに出ていた崖っぷちのルナです。
    まさか私の事を観て、モデルにして下さっていたなんて…
    嬉しいけれど、何だか照れくさいです。
    本はネットで購入して読みました。
    物語に自分が登場しているのが不思議でしたが、
    楽しく読ませていただきました。
    長文になってしまいましたが、本当にありがとうございました。
    Twitterフォローさせてもらったので、さがしてみて下さい。
    また遊びに来ます。

    • 山下卓 のコメント:

      はじめまして。『RUN RUN RUN』作者の山下卓です。
      ほんとに、あのルナさんなんですね。すごく、嬉しいです。
      まさかこうして、ご本人に来ていただけるなんて。
      あのテレビ番組のことは今でもよく覚えています。
      徳間書店の編集者と小説の打ち合わせをして、
      どんな女性を主人公にしようかなと悩んでいるときに、
      あの番組がたまたまテレビでやっていて、これだ!と思ったんです。
      バッティングセンターのシーンは特に覚えていて、
      あれを見た瞬間に、『RUN RUN RUN』の物語が出来上がった感じでした。
      どこかで、もしかしたらご本人が見てくれるかな、という淡い期待はありましたが、
      こうして本当につながれるなんて、小説を書いていてよかったな、と思えました。
      こういうの、書きこむのって、ご本人は勇気がいると思います。
      コメントを書きこんでくれて、本当にありがとうございます。
      僕も店長さんのページ「奇妙な店長の戯言」に書きこむのは、少し躊躇がありました。
      でも、あそこに書きこんで、良かったです。
      こういうのは、ネットの良いところですね。
      また、ぜひ、遊びに来てください。
      なんか、小説を書く力が湧いてきました。
      ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございます!

      山下卓